ケニア「SAMBURU TRUST(サンブルトラスト)」

2018.08.10

ケニア「SAMBURU TRUST(サンブルトラスト)」

2001年にスタートした、ケニアの「サンブルトラスト」は、私が現地へ行って出会ったNPO団体で、 地域にとって本当に必要な活動を行っている団体です。
彼女たちが活動するエリアでも、学校の運営、地域の治安回復、動物の保護、レンジャー達への賃金、食糧の確保など、 大きな問題をたくさん抱えています。
ここ2年ほど、Laikipia(ライキピア)近隣地域は例年にないひどい干ばつ被害にあい、そのせいで略奪や部族闘争が起こり、 サンブルトラストのスタッフ達もなんとか生き延びてきた状態ということでした。
今年は雨期が来たおかげで、最悪の危機は乗り越えたようですが、まだまだ安定はしていません。

サンブルトラストの代表・ジュリアの話しを聞くと、彼女たちのプロジェクトを着実に進行するのに年間120,000ドルかかるそうです。
現在進行しているプロジェクトの他にも、学校の教室を増やしたり、ダムの建設を行いたいそうです。

ジュリアが「サンブルトラスト」を始めるきっかけとなったのは、1999〜2001年に起きた干ばつでした。
ひどい干ばつで村の牧草がなくなってしまうと、男たちは家畜を引き連れ草の生えている地域を探し、長い間村を不在にします。
残された女性と子供達は水も野菜もなく、食糧源である乳製品までもなくなり、飢えに苦しむ状況が続いてたそうです。
両親がアメリカへいる間、大学を卒業したばかりのジュリアが自宅の牧場の世話をすることになり、干ばつによる酷い状況を目の当たりにします。
ある日、近くの部族の村を訪れたジュリアは、とある家で1杯のチャイをご馳走になりました。
何気なく頂いたチャイでしたが、その家では小さな子供達が今日食べるものもなくて、とても貴重なチャイを客人であるジュリアの為に出してくれた事に後々気が付き、 とても大きなショックを受けたそうです。
不衛生な環境で飢えに苦しむ子供たちがたくさんいるのに、男達が家畜を連れて戻るのを待つしかない、女性たちは無力な状態でした。
彼女は決してその時のことを忘れることができない、と言っていました。

180810_kenya2

ジュリアはNanyuki(ナニュキ)という大きな町で約400万シリング(約440万円)分の食糧をローンで集め、ただ分配するのではなく、村の女性たちが用意出来るもので物々交換を行いました。
そして、子供達が絵を描いたり勉強が出来るように、自身の古い画材を集め、部屋を用意しました。
また、サンブルの女性たちの得意なビーズ製品を製作する「サンブルワークショップ」を始めて女性達を雇用し、村に収入源を作りました。
これが「サンブルトラスト」の始まりでした。

つぎに蔓延していた疥癬と栄養失調の根絶への取り組み。
そして、ハエによって蔓延するトラコーマ(眼の感染病)で多くの人が失明している事を知り、 トラコーマを根絶する五カ年計画を開始しました。
この五カ年計画は結局10年かかってしまったそうですが、この地域では完全にトラコーマを根絶することに成功したそうです。

2006年、近くの川が完全に干上がってしまった時状況はとても悲惨だったそうです。
絶えず水源を確保するために、ダムの建設に取り組みました。
村でのダム計画は1.雨水を集め、2.雨期の川の氾濫を防止し、3.放牧地を再生する事です。
現在までに8つのダムを造りましたが、まだまだよりよいものへと改善しつづけているそうです。

2009年には象牙の密猟が大きな問題となりました。
ケニア内で多くの密猟が横行し、2011年にはサンブルトラストの活動エリア内で47頭もの象の死骸が発見されたそうです。
サンブルトラストは密猟者を逆にレンジャーとしてスカウトし、村の長老と協力し「マラニ1(ワン)」と 呼ばれる強いレンジャーチームを作り上げました。
お金の為に命を危険にさらしてまで象牙の密猟する者達も、安定した収入の仕事があればそんな事はしなくて良いのです。
彼らはレンジャーとして働くことで、その地域の野生動物がいかに尊いものかを知り、 自分たちが自然と共存していく意味を知りました。
ここ最近はこの区域で密猟者とは遭遇しておらず、この区域での密猟をほぼ根絶させることができたそうです。
全てのプロジェクトが大切ですが、この動物保護のプロジェクトはとても特別なプロジェクトで、 レンジャーの仕事はとても素晴らしいものです。

母国語学習、環境への意識と協力、野生生物の保全、そしてクリーンな水の供給、 地域に密着した組織作りと年長者の伝統的な権威の尊重など、 サンブルトラストは全体として物事をとらえ、遊牧民である彼らにとって自然との相互作用の関係性をつくる 素晴らしいモデルを築き上げていました。

私は元々この地域がとても好きでした。
ジュリアもこの地域と繋がりのある人で、地元の言葉もよく分かっているし、きちんと自らが活動し、 密着している、なので私も協力したいと思いました。
もし、興味があれば是非、彼女たちの活動を知ってください。

http://www.samburutrust.org/

文:David Morrall・写真:SAMBLE TRUST、David Morrall

  1. トップ
  2. トピックス
閉じる